成長ホルモン治療とは?

監修:大阪母子医療センター消化器・内分泌科 副院長 位田忍 先生
熊本大学医学部附属病院小児科 助教 間部裕代 先生

成長ホルモン治療とは?

どんな子が治療できるの?

治療の対象となるかどうかは、専門医が問診や検査などをおこなって原因を調べ、低身長の度合いや成長の速度などに応じて判断します。現在、日本でこどもに対する成長ホルモン治療が認められている*のは、次の原因による低身長です。(* 2017年8月31日現在)

  • 成長ホルモン分泌不全性低身長症
  • ターナー症候群
  • 慢性腎不全
  • プラダーウィリー症候群
  • SGA性低身長症
  • 軟骨異栄養症

どんな治療なの?

何らかの理由で、脳の下垂体というところから分泌される成長ホルモンの量が少ない、または分泌されない場合におこなうのが成長ホルモン治療です。
また、骨の病気(軟骨異栄養症)や染色体の異常が原因(ターナー症候群、
プラダーウィリー症候群)の低身長の場合にも、成長ホルモン治療をおこなうことで低身長を改善できることがあります。成長ホルモンはタンパク質ですので、口から飲むとおなかの中で分解されてしまい、効き目を発揮することができません。このため、週に6~7日、家でペン型注入器を使って成長ホルモンを注射します。家でおこなうので、注射をするために毎日病院へ通う必要はありません。

自分で注射できるかしら?

成長ホルモン治療は、日本において40年以上にわたって、たくさんのこども達の成長を助けてきた治療法です。治療を始める前に病院で注射のしかたを練習したり、治療で気を付けることなどの説明がありますので、あまり心配することはありません。家で注射をする際に使うペン型注入器は、病院で見る注射器とは形も使い方も異なり、ご家族やお子さんの不安をやわらげる工夫がされています。また、注射針は予防接種や血液検査の注射針に比べると、とても細くて短いため、比較的痛みは少ないといわれています。治療についてわからないことや心配なことがあれば、かかりつけの医師によく相談することで、初めての治療への不安を軽くすることができるでしょう。お子さんが小さいうちは、ご家族が注射をおこなうことが多いですが、お子さんの年齢に応じて、お子さん自身が注射する場合もあります。

いつ注射するの?

"寝る子は育つ"の言葉通り、成長ホルモンは昼間よりも夜寝ている間にたくさん分泌されます。本来、成長ホルモンは眠りについて1~2時間後から、眠りの深さにあわせて、たくさん分泌されたり、少なくなったりを何度か繰り返し、波のようなリズムで分泌されます。治療で成長ホルモンを補う場合も、この自然な分泌リズムに近くなるよう、週に6~7日、夜寝る前に注射しますが、どうしてもできない時は時間をずらしても大丈夫です。

いつから始めて、いつまで治療するの?

低年齢で診断をおこない、早くから治療を始めたほうが、治療の結果がよくなるといわれています。治療を早く始めることで、成長の遅れをとりもどせる可能性が高くなるためです。
成長ホルモン治療を始めると、1年目急速に身長が伸び、その後だんだんと伸び方はゆるやかになっていきます。思春期を経て骨の端にある骨端線(こったんせん)という部分で細胞が増えるのが止まると、身長の伸びも止まるため、治療を終了します。他にも、治療により十分に身長が伸びた場合、成長の速度が非常に遅くなった場合など、かかりつけの医師の判断により、治療を終了します。

おとなになったら、成長ホルモン治療は必要ないの?

低身長の改善を目的とした治療は、こどものうちだけですが、成長ホルモンには筋肉や脂肪をよりよい状態にたもつための大切な役割もあり、おとなになって成長ホルモンが著しく不足していると、肥満、高血圧、高脂血症などになる可能性が高いといわれています。現在、日本では重症の成人成長ホルモン分泌不全症にも、成長ホルモン治療ができます。治療を始める目安やお薬の量は、こどもと異なります。おとなになってからの成長ホルモン治療については、かかりつけの医師にご相談ください。

治療前にはどんな検査をするの?

最初の受診では何をするの?

生まれたときの状態やその後の発育状態、今までにかかった病気、両親の身長や思春期の時期などについて聞く、問診をおこないます。
これらは、低身長の原因を調べるために必要な情報です。正確に伝えられるように、母子手帳や学校健診で発行される発育の記録を持っていくと良いでしょう。同時に身体測定や一般的な診察によって、お子さんの体格、健康状態、栄養状態などを判断したり、隠れた病気がないかどうか判断したりします。思春期年齢に近い場合には、二次性徴(女の子の場合には乳房、恥毛、男の子の場合には睾丸、恥毛)のあらわれ方も観察します。

どんな検査をするの?

問診、診察とともにお子さんの成長の評価をおこなったうえで、必要に応じてさらに詳しい検査をうけることになります。専門医の判断で、必要な検査やおこなう時期を決めます。必ずしも、全ての検査をおこなうわけではありません。

手のレントゲン

手の骨から骨の年齢を調べ、骨が実際の年齢に見合った成長をしているかどうかを確かめます。こどもの手のレントゲン写真で、骨の端のほう(骨端と骨幹の間)にすきま(骨端線)が見えればまだ身長が伸びる余地があると考えられますが、このすきまがなければ、成長は止まったと考えられます。

血液・尿検査

血液やおしっこを調べることで、腎臓や肝臓、糖尿病などの病気がかくれていないかなどの健康状態を知ることができます。また、朝一番のおしっこに含まれる成長ホルモンの量をはかることで、寝ている間に成長ホルモンが十分に分泌されていたかどうかを調べることもあります。血液からは、成長に影響をあたえるホルモンであるIGF-I(ソマトメジンC)、性腺刺激ホルモン、甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの量を調べることもできます。

成長ホルモン分泌刺激試験

成長ホルモンの分泌を促すお薬を投与した後、一定時間ごとに数回血液をとって、成長ホルモンを分泌する力がどれくらいあるかを確かめます。成長ホルモンは昼間よりも夜にたくさん分泌されます。本来、成長ホルモンは眠りについて1~2時間後から、眠りの深さにあわせて、たくさん分泌されたり、少なくなったりを何度か繰り返し、波のようなリズムで分泌されます。このため、昼間に1回だけ採血をして成長ホルモンを測定しても、成長ホルモンがしっかりと出ているのか判断することができないので、このような検査をおこないます。

全身のレントゲン

骨の病気が原因である可能性が考えられる場合、全身のレントゲン写真をとることがあります。

染色体検査

染色体が原因の低身長である可能性が考えられる場合におこないます。

頭部MRI検査

成長ホルモンを分泌する脳の下垂体やその近くに問題がないか、MRIという頭のなかの様子を撮影できる機械で調べます。

すぐに治療できるの?

成長ホルモン治療ができると診断されたら、成長ホルモン治療の方法、効果や安全性、医療費、開始までの手続きなどの説明をうけます。ご家族とお子さんが十分に納得ができたら、治療を始め ます。また、医師の判断やご家族との話し合いのうえ、すぐに治療はせず経過を観察する場合もあります。

治療中にはどんな検査をするの?

どうして治療中にも検査をするの?

治療を開始したら、家で成長ホルモンの注射を続けることになりますが、定期的に病院で検査をおこなう必要があります。これは、治療の効果や副作用が出ていないかなどを確かめるために行われます。また、長い治療期間のなかで、治療の継続や終了の判断をおこなうためにも、定期的な受診はたいせつです。

成長ホルモン治療を開始した場合

  • 1ヵ月目、(2ヵ月目)、3ヵ月目、6ヵ月目に、身長・体重の測定(成長曲線の記録)、診察、血液検査・尿検査を行います。その後も、年に3~4回は診察、 検査が必要です。
  • 6ヵ月~1年ごとに、骨年齢を測定します。

治療せず経過観察する場合

  • 6ヵ月~1年に1回受診して、身長・体重・骨年齢の測定を定期的に行います。

※ 主治医や病院の判断によって異なる場合があります。

いつまで治療を続けるの?

治療を続けるかどうかは、年齢、身長、成長の速度、骨年齢などをもとに医師が判断します。また、医療費の助成制度を利用している場合は、助成制度によってそれぞれ助成を受けられる基準が決められています。

小児慢性特定疾患治療研究事業の医療費助成については、身長が治療終了の基準となります。この終了の基準の身長は、正常な大人の身長の下限と考えられている身長です。

男子 女子
身長 156.4cm 145.4cm

どんな医療費助成制度が利用できるの?

医療費の助成について

成長ホルモンは高価な薬のうえ、治療期間も長期にわたるので、健康保険を利用した3割負担だとしても、かなりの高額になります。 そのため、成長ホルモン治療には各種の医療費助成制度が利用できるようになっています。

それぞれの制度には、前年度年収のほかに治療開始、継続の基準などがあります。詳細はお近くの保健所や市役所などにお問い合わせください。
(※リンク先の都合によりページが予告なく、変更、移動、工事中等の場合がありますので、ご了承ください。)

1.小児慢性特定疾病医療費助成制度

成長ホルモンで治療ができる疾患のうち、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象となる疾患があります。そのため、SGA性低身長症などを除き、助成を受ける基準に該当すれば、医療費の一部が公費によって負担されますが、1年ごとに更新する必要があり、保護者の所得に応じて自己負担限度額が設定されています。自己負担限度額、必要書類などの詳細は、小児慢性特定疾病情報センターのサイトでご確認いただくか、お近くの保健所にお問い合わせください。

2.指定難病医療助成制度

下垂体機能低下症(成長ホルモン分泌不全性低身長症など)は、指定難病に該当します。そのため、助成を受ける基準を満たせば、医療費の一部が公費によって負担されますが、1年ごとに更新する必要があり、保護者又は本人の所得に応じて自己負担限度額が設定されています。自己負担限度額などの詳細は、難病情報センターのサイトでご確認いただくか、お近くの保健所にお問い合わせください。

3.子ども医療助成制度、乳幼児医療助成制度

子どもの医療費の自己負担額について、都道府県および市区町村から助成が受けられる制度です。対象となる年齢や所得制限、制度の名前などは、お住まいの都道府県および市区町村によって異なります。詳細はお住まいの地域の市役所や区役所、町村役場にお問い合わせください。

各都道府県の子育て支援(乳幼児)医療費助成制度
北海道 北海道
東北 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島
関東 東京 神奈川 埼玉 千葉 茨城 栃木 群馬 山梨
中部 愛知 岐阜 静岡 三重 新潟 長野 富山 石川 福井
関西 大阪 兵庫 京都 滋賀 奈良 和歌山
中国・四国 鳥取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知
九州・沖縄 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄

4.高額療養費制度

1日から月末までの1ヵ月の間に、病院で支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合、超えた分が加入している健康保険から戻ってくる制度です。自己負担限度額は、所得や年齢に応じて設定されます。申請手続きなどの詳細は、全国健康保険協会や健康保険組合、各種共済組合、お住まいの地域の市役所、区役所、町村役場など、加入している健康保険の窓口にお問い合わせください。
・厚生労働省 高額療養費